「箇条書き」と聞いてどんな印象を持たれるでしょう?
僕の最初の印象は、「へ、いまさら・・?」でした。
本書は、伝えたいことを単に羅列するだけの、ごく普通の「箇条書き」を学ぶ本ではありません。
箇条書きを超えた「超・箇条書き」を学ぶ本です。「超・箇条書き」は、相手のことをとことん考え、相手の情報処理を最小化する作業です。そして、相手に動いてもらうことで、自分や周りへ変化を与えていきます。
メールやレポート、プレゼン資料、ソースコードに至る様々なところで、箇条書きを使う機会があります。しかし、それを体系的に学んだことはありませんでした。社会人になって、なんとなく先輩社員も使っているから自分も活用し始めた、というイメージです。
(それまでは箇条書きすら使わず、ダラダラと字続きの文章を書いてました。。。)
本書をたまたま本屋で見かけたときに思いました。
「箇条書きをテーマにした本ってどんな内容なんだろう?」
「そういえば、箇条書きを体系的に学んだことってなかったな。」
「そもそも、たかが箇条書きなんて学ぶ必要あるの?」
「でも、なんか興味あるな。」
と、思いを張り巡らせながら読んでみることにしたのでした。
結果、読んで大正解でした。自分がこれまで思い描いていた箇条書きに対する考え方がガラリと変わりました。いかに相手を考えず、ポリシーを持たずに箇条書きをしていたことに気づかされました。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は「超・箇条書き」という本から得られた学びを共有していきたいと思います。
著者について
著者は、杉野 幹人さんです。
現在(2020.05)は、東京農工大学 工学部 特任教授、A.T. カーニー CMTアドバイザーの二つを兼業されています。
シリコンバレーで仕事を共にした500人以上の起業家のプレゼンや提案資料から、箇条書き(Bullet points)で短く魅力的に伝えることのパワーとその技術を学ぶ。
著者プロフィールより引用
世界最高峰の箇条書きを数多く見られた、箇条書き界のプロという感じですね。
東京農工大学でも、箇条書きを基礎としたストーリーライティングを教えられているようです。
「超・箇条書き」の技術
「超・箇条書き」とは、本書を引用すると次の通りです。
多くの人は伝えたいことを羅列するに留まっている。形式的には箇条書きになっていても、単に情報量が減っただけで、伝わらないものになっている。
p28より引用
それとは真逆の「短く、魅力的に伝える」箇条書き。そして人を動かす箇条書き。
本書では、それらを『超・箇条書き』と呼ぶこととする。
本書では、3つの大きな技術、およびそれぞれに紐づく3つのコツについて、事例を交えて詳しく解説されています。
紹介されている技術を、(あくまで)自分なりの解釈で図解したものがこちらです。

これらの技術はなんとなく出来ていることもありますが、体系的に理解できていませんでしたし、意識的に活用できているわけではありません。本書では、それらを細かく言語化してくれているため斬新さがあります。(あ、個人的には全然知らなかった内容も多々ありました。)
今回は、僕自身が「即実践しないと」と感じた内容について、以下の1点だけ紹介していきます。
(即実践したいテクニック)隠れ重言を排除する
「隠れ重言を排除する」というテクニックについて、簡単に本書の内容を要約していきたいと思います。
まず重言とは、次のように意味が重複している表現のことです。
- あらかじめ予定しておいてください。
- 製品Aはいまだに未完成です。
予定すること自体が、あらかじめのタイミングで行うため、「あらかじめ予定する」は重言です。また、同様に「いまだに未完成」も重言となっています。
このように、意味の同一な語句をむだに繰り返してしまうことを「重言」といいます。
重言は、一般的には避けたほうが良いとされていますが、意識的に用いられる場合もあります。また、話し言葉ではわりと普通に使われています。たとえば「射程距離に入る」とか「被害をこうむる」とかですね。
「超・箇条書き」においては、このように分かりやすい重言ではなく、「隠れ重言」を避けることを勧めています。
では、「隠れ重言」とはなにか?
本書から引用すると下記のとおりです。
「隠れ重言」とは、文のなかでは重複はないが、そのコンテキストを踏まえると重複していてわざわざ伝える意義がないものだ。このため、それを伝えられた人もたいした意味を見出すことができない。
本書 p133
隠れ重言とは具体的にはどのようなものか。
本書から引用すると、次のようなマーケティング部社員の所信表明の例文には隠れ重言が含まれています。(p135より引用)

では、どの文が隠れ重言となっているでしょう?
本書では、3つ目の文以外は全て「隠れ重言」となっていると指摘しています。
今回のコンテキストであるマーケティング部においては、お客様に価値を提供することは業務上の前提となります。また、一生懸命に効率的に頑張ることは働く上での前提です。
このように、コンテキストを踏まえると当たり前な内容を「隠れ重言」と定義しています。
なお、3つ目の文については、「自分の信じる」という部分で合格点であることしています。4つ目の文は、「できるかぎり」という部分に隠れ重言があります。
このため、文全体が隠れ重言になっている文を排除して、新たにメッセージを構築し直すと次のようになります。(p137より引用)

もともとは6つあった文は、2つに減ってしまいました。
しかし、意味のないことを排除することで、ポイントに絞ることが出来ています。ポイントを絞ることで、相手はそのポイントに集中してくれるのです。
また、本書では、「プレゼンにおけるNGワード集」という節で、プレゼンでよくやってしまう隠れ重言を紹介してくれてます。
個人的には非常にドキっとする内容でした。(しょっちゅう、やってしまっているー…)
本書の中では理由などの詳細を解説してくれています。
ぜひ本書を手にとって確認してみてくださいね。
まとめ / 「超・箇条書き」は、主張を効率よく人の心へ届けるメッセージ術である
何の気なしに読み始めた「超・箇条書き」ですが、とても示唆に富んでおり良書でした。
これは、ただの箇条書きの本ではありません。
相手に正しく、速く伝えるためのメッセージ術の本です。
この本で学んだいくつかのテクニックを、普段の箇条書きに少しプラスすることで、質がグンと上がります。
また、単に箇条書きがうまくなるだけではありません。プレゼンにおけるメッセージづくり、ストーリーテリングの技術が向上することでしょう。
仕事でメールを出す人や、プレゼンに臨む人は、一度は読んでおいて損はない本じゃないかと思います。
箇条書きをなんとなく書いているなあと感じている方は、読んでみてはいかがでしょう。